その裸の帝王、ライフンヌ6
俺を守ってくれた母さんはいない。
俺の命を守るのは、俺の力だ。
「血液・・・?」
運び屋の提案で、勝負はポーカーで行われることになった。ポーカーという条件を呑む代わりに奴らが提案したのは船を動かせる操縦士の血液を賭けることだった。
100ccをチップ1枚として換算し奪い合う。
致死量を超えた血液を失い操縦士が死んだ方が敗北。
残った操縦士が船を自分の目的地に運べるというわけだ。
奴らが勝てば更に俺の身柄と引き換えに金塊を回収できる。
運び屋は騒がしく抵抗したが血液回収の針を刺されようやく観念したようで、頼むぞライフンヌ!と檄を飛ばし、奴について語り始めた。
運び屋によると相手は近海を統べる海のマフィアでありボス。
元潜水艦乗りで天才的な技術でいくつもの敵船を沈めてきた歴戦の猛者だそうだ。
ある出来事がありマフィアとなったらしいが、
「そこまでにしたまえ。ライフンヌ君。」
話を遮る奴の腕にはしっかりと採血器の針が繋がれている。
奴の顔をみると、たしかに随分と修羅場をくぐった面構えをしていたが、不思議と恐怖も畏れも感じなかった。
「・・・ポーカーか。」
ポーカーは以前運び屋と仕事でアメリカに渡った時、カジノでパリピ野郎に教わったゲームだ。
あの時は野郎のイカサマを見破れず俺も運び屋も高い授業料を支払ったが、今度はあの時のようにはいかない。
腹を括って始めた勝負の決着は意外なほどあっさりと決まった。
無謀とも言えるチップの上乗せで奴は自滅したのだ。奴は最初から勝負をする気などなかったのだろうか。
「…。」
絶命の直前、奴は小声でボソリと呟いたが聴き取ることはできなかった。
奴の最期は不可解ではあったが、俺に何かを伝えようとしていたようにも思えた。
ボスを失った組織は脆いものだ。
残った下っ端供は全員縛り上げ、元の船に押し込んだ。
救援でも出しておけば死ぬことはないだろう。
俺は船の操縦を運び屋に任せ、甲板でぼんやりと流れる雲を眺めていた。
「ふう。」
命がけの勝負の後。気を抜いていたのか、奴らが気配を消すのが上手いのかはわからないが、俺は首元に突き立てられた刃の感触で我に返った。
気がつくといつ入り込んだのか、2人の女が船に乗っていた。
刀で俺の首元を制しているのは花柄の着物で眼鏡をかけた髪の長い女侍、と
「何をやってんだい!よしな!!」
もう1人は厚みと重みのある声で眼鏡の女を止めた、灰色の着物を着た極道女。
ぬるいな、と悪態をつき女侍は刀を納めた。
俺達が出港した後、奴らの動きに気付いたボスが2人を増援として送り込んでいたのだ。
ボスの命とはいえ、マフィアの抗争が行われている危険な船に、レーダーを逃れるための小さな二人乗りの小舟で大海原を渡って来た事には驚いた。
これがジャパンの女マフィアか。
船は無事に着岸。
船着場には大勢のジャパンのマフィアが迎えに来ていた。
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