その裸の帝王、ライフンヌ

ポンドポーチの街一番の大富豪が殺害される十数年前

ある田舎町の小さな家で、彼はやってきた男に殴られていた。

それが少年ライフンヌだった。

目障り

理由はそれだけだった。
特に気にしたこともなかったが、奴らが言うには目つきが気に入らないとのことだった。

奴らが俺を殴っている間、母さんは決まって隅で震えている。

始めは俺を助けようとしてくれた。
だが、力でかなわない相手に為すすべが無くなったのだ。

母さんは美しい人だった。母さんが傷つかないなら、助けてくれなくて良い。
俺はそう思った。

「ちくしょう…」


それに納得すると、次に湧いてくるのは己の惨めさ。どうすることもできない母の口から漏れる謝罪の言葉。それを聞くたび、奴らを殴れない俺の弱さを呪う。
(俺に力があれば、金があれば、強ければこんな姿を見せずに済むのに。)

何より許せないかったのは、弱い俺を見て、母さんが自分を責める事だった。

それから程なくして、この家には不釣り合いの大金と、母からの別れの手紙が届いた。

母さんはもういない。


母さんの残した金は使えなかった。
これを使い切ってしまったら俺は母さんとの繋がりが消えてしまう気がしたから。

1人になった俺は盗みを始めた。
仕返しの気持ちもあったと思う。
奴らの家に忍び込んで金目のものを、食料を奪った。

盗みはバレても構わなかった。
所詮は母を犯し俺を殴る事に金を払っていたような連中だ。

気に入らねえらしい俺の目つきでナイフをチラつかせれば簡単に黙る。

「つまらねえ。」


母さんのいないこの世界で、俺を満たすものは何もなかった。

盗みが面倒になった俺は次第に、他人を脅して盗ませるようになった。

盗みの手が増えるとその分、多くの金が手元に舞い込むようになった。

集まった金に母さんを重ね、俺は1人になってから初めて、泣いた。

ー続くー

0コメント

  • 1000 / 1000